法人成年後見制度
認知症、知的障がい、精神障がいなどによって、自分ひとりでものごとを決めることが難しい場合や、判断が十分にできなくなった場合に、家庭裁判所で決められた成年後見人などが、本人を不利益から守るために支援する制度です。
補助、保佐、後見の違い
類型 | 補助 | 保佐 | 後見 | |
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人の呼び方 | 本人 | 被補助人 | 被保佐人 | 成年被後見人 |
援助する人 | 補助人 | 保佐人 | 成年後見人 | |
※援助する人は、必要に応じて、複数の人や法人が選ばれることもあります。 | ||||
開始の必要条件 | 援助する人を監督する人 | 補助監督人 | 保佐監督人 | 成年後見監督人 |
対象となる人 | 認知症や知的障がい、精神障がいなどによって、判断能力が十分でない方 | 認知症や知的障がい、精神障がいなどによって、判断能力が著しく不十分な方 | 認知症や知的障がい、精神障がいなどによって、判断能力が全くない方 | |
鑑定などの必要性 | 診断書など(原則として鑑定は必要ない) | 原則として鑑定が必要 | ||
申し立て手続き | 申し立てを行う事ができる人 | 本人、配偶者、四親等内の親族、成年後見人など、成年後見監督人、検察官、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、市町長 | ||
本人の同意 | 必要 | 必要ない | ||
同意権・取消権 | 同意権・取消権が与えられる範囲 | 特定の法律行為(申し立ての範囲内)(日常生活に関する行為は除く) | 民法13条1項各号が定める行為(日常生活に関する行為は除く) | 日常生活に関する行為以外の行為 |
本人の同意 | 必要 | 必要ない | ||
取り消しができる人 | 本人と補助人 | 本人と保佐人 | 本人と成年後見人 | |
代理権 | 代理権が与えられる範囲 | 特定の法律行為(申し立ての範囲内) | 財産に関するすべての法律行為 | |
本人の同意 | 必要 | 必要 | 必要ない | |
援助する人の一般的な義務 | 本人の意思を尊重すること・本人の心身の状況及び生活の状況に配慮すること |
法人後見とは
援助する人(補助人、保佐人、成年後見人)は、弁護士や司法書士、社会福祉士が選任されることが多いですが、社会福祉法人などのように「法人」が選任されることもあります。これを「法人成年後見」といいます。
平成12年4月に施行された成年後見制度では、法人が成年後見人などに選任されることが認められました。実際に、社会福祉法人、社団法人、NPO法人などが成年後見人などに選任され、活動されているケースが全国的に増えつつあります。
法人後見に期待されること
法人が成年後見人などを受任されるのが期待されているのは以下のとおりです。
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1.長期にわたる後見業務
若い人など後見期間が長期にわたり一貫した永続的な後見業務が必要となる場合に、法人が受任すれば、その法人が存続する限り継続的に支援を行うことが可能となります。
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2.事情により成年後見人の選任が困難な場合の受け皿
低所得などの理由により成年後見人の選任が困難な場合、その受け皿となっています。
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3.成年後見人の受け手不足の対応
成年後見制度のニーズの増加に伴い、第三者の成年後見人などの受け手不足に対応するための受け皿となっています。
現在、地域福祉権利擁護事業から成年後見制度への移行が必要な方もおられます。
しかし、成年後見制度の申立人がなかなか見つからない、親族で成年後見人などの引き受け手が見つからない、そのために第三者の成年後見人を選任したいが低所得のために後見報酬の支払いが難しく利用しづらいなど、様々な理由で成年後見制度の利用が進みにくい現状があります。
そのような課題を解決し、成年後見制度を必要とする人が制度を利用しやすいように、法人が成年後見人などを受任することが特に求められています。